MAILLARD LAB JOURNAL
電子レンジ先輩の段取り帖――さつまいもの皮をカリカリの蜜がけに
電子レンジ先輩だよ。私は、さつまいもの皮をいきなり油と砂糖の熱に放り込まず、まず中の水分を動かして、乾かす時間を短くする係。順番を守れば味方になるよ。今日は薄い皮に、カリッと固まる蜜の席を用意しよう。


皮の水分に、まず短い助走をつける

私は皮を、フライパンに入れる前のところで支えるよ。電子レンジの電磁場は、食品中の水分子を振動させて内部から加熱する。だから短時間だけ部分加熱すると、皮の内側にある水分を動かし、その後のフライパンで乾燥へ移りやすくできるんだ。最初からフライパンだけで水分を追い出すより、そこにかかる熱の負担を抑えやすい。
ここで欲しいのは、火の通った柔らかい皮じゃないよ。皮の厚さもレンジの出力も一定ではないから、時間を決め打ちするより、しんなりしたところで止める。薄い端だけ先に硬くなるようなら、加熱を続けず、状態を見て次へ進もう。私は焦らせる係じゃなくて、素材が次の工程へ移れるように整える係だからね。
この短い助走のあとには、フライパンで表面の水分を飛ばす工程が待っている。レンジだけでカリカリまで仕上げるのではなく、後の乾燥をしやすくする前処理として使うのが、この一皿での役目だよ。
蜜の前に、蒸気がほぼ止まるまで乾かす

レンジから出した皮は、フライパンで加熱して表面の水分を蒸発させるよ。私が次の段取りへ渡す合図は、皮が乾いたように見えることと、目視できる蒸気がほぼ止まること。湯気が出ているうちは、まだ皮から水分が抜けている途中。そこで砂糖を入れると、糖は表面にとどまるより、水相に溶け込みやすくなる。
砂糖を絡める前の乾燥は、食感づくりの土台なんだ。前処理は原料の細胞や組織の状態に影響し、乾燥加工の大事な段階になる。ここでは難しい名前を覚えるより、皮の状態を見て判断しよう。蒸気が残るうちは待つ。ほぼ止まったら、次の工程へ。フライパンの中で水分が残ったまま蜜を作ろうとすると、糖衣がべたつく側へ傾きやすいからね。
皮を重ねたまま加熱すると、乾き方にも差が出る。できるだけ広げ、状態を見ながら水分を飛ばしていこう。私は「もう十分」と勝手に決めないよ。最後の合図は、鍋から上がる蒸気を見ているあなたに渡す。
砂糖は薄く、弱火で短く絡める

蒸気がほぼ止まったら、砂糖を加える番。加熱で溶けた糖は、冷めると非晶質または結晶性の固体として固まり、皮の表面を覆うことがある。冷めて固まる性質を借りて、蜜がけのカリッとした被膜を作るんだ。ここで狙うのは、皮を砂糖のかたまりで包むことじゃない。薄く行き渡ったところで止めるのが、先輩からの勘所だよ。
火は弱く、加熱は短く。糖の褐変や熱分解が進む前に、薄く絡んだところでフライパンからの加熱を止めよう。糖がしっかり溶けたように見えても、余熱は続く。色を追いかけて火にかけ続けると、欲しい被膜を越えてしまうことがあるから、仕上がりを見て早めに離れる判断も大事。
ここまで水分を先に抜いた理由が、ようやく表に出るよ。水分が多いと糖は溶液状態にとどまりやすく、表面がべたつきやすい。だから、蜜の段階でなんとかしようとせず、その前に乾かしておく。私は順番を整える係。皮を乾かす工程と、糖を薄く固める工程を、ひと続きに考えてね。
冷却は、皮同士を離して仕上げる

フライパンから出したら、皮を単層に広げよう。熱い糖は、冷却に伴って固まり、表面の被膜になる。その途中で皮同士が触れたままだと、残った水蒸気や糖の接着でくっつきやすいんだ。せっかく薄く絡めたのに、冷めてからひとかたまりになったら、カリッとした表面も楽しみにくい。最後のひと手間で、素材同士の距離を取るよ。
固まるまでの時間は、室温や糖衣の厚さで変わる。何分で完成、と時計に任せきりにせず、完全に冷めてから硬さを確かめるのが判断基準。熱いうちは糖が柔らかくても、冷えて被膜が落ち着くことがあるから、早く味見したい気持ちを少しだけ待たせよう。私はレンジの中から出てきた時点で仕事を終えるけれど、仕上がりを決めるのはこの冷却までの段取りだよ。
振り返ると、私がしたのは皮を直接カリカリにしたことではない。部分加熱で乾燥へ渡しやすくし、砂糖を加える前に水分を飛ばす時間を助けたこと。あとは弱火で糖を薄く絡め、単層で冷やす。順番が通ると、さつまいもの皮も蜜も、べたつかずに落ち着く場所を見つけやすいんだ。