MAILLARD LAB JOURNAL
焼きそばの赤い舞台裏。リコりんが守る、焼きと香ばしさの順番
やっほー、リコりんだよ。赤い色素のリコピンとして、今日は焼きそばに潜入中。材料はキャベツ、麺、液体ソース。ぼくの色が出番を迎える料理ではないけれど、加熱で強くなる赤い子として、熱と油、水分の順番を見張るね。


ぼくの赤は出番なし。でも、熱の段取りは見てるよ

最初に正直に言うね。この焼きそばの材料はキャベツ、焼きそば麺、液体ソース。トマトのような、ぼくリコピンを含む材料は入っていないの。だから、この皿が赤くなるとか、ぼくの量が増えるとかは言えないよ。ぼくの担当は、ここでは料理の色じゃなくて、熱の使い方を見守ること。
焼きそばって、ひとつのフライパンの中で野菜も麺もソースも仕上げる料理でしょう。でも、全部をいっぺんに入れると、キャベツの水分が麺に移ったり、フライパンの温度が落ちたりして、焼きたいところで焼けなくなることがある。だからこの一皿では、キャベツと麺を別々に加熱して、最後に合わせるよ。
ぼくが気にしているのは、材料の多さじゃなくて、表面の水分と熱がどこへ行くか。先に材料を量って並べておけば、キャベツを取り出し、フライパンを戻し、麺を焼く流れが途切れない。赤い子の見張り番、まずは台所の段取りからね。
キャベツは先に焼いて、いったん席を外してもらう

キャベツを麺と分けて高温で加熱するのは、水分の移動を遅らせるため。キャベツから出た水がそのまま麺の表面に触れると、麺が焼ける前に水を受け取ってしまう。麺の表面で水分が蒸発するには熱が使われるから、表面温度が上がりにくくなって、褐変も進みにくいんだ。
だからキャベツは、短時間だけ焼いて取り出すよ。表面の水分が飛び、軽く色づくところを狙う。長く加熱してやわらかくしすぎると、組織が崩れて水分も出やすくなるから、ここは焼き色を見たら引き上げる判断が大事。キャベツにしっかり火を通す工程というより、表面を香ばしく整えて、麺への水分移行を後ろへずらす工程なの。
取り出したら、フライパンの温度は下がっているよ。具材を入れると、食材へ熱が移るからね。ここで間を置かず、空のフライパンを短く再加熱してから麺を入れる。煙が出るほど熱くする必要はないよ。油脂を傷めたり、焦げを呼んだりする過熱は避けて、麺を焼ける熱に戻す。焼く順番にも、ちゃんと理由があるんだ。
麺はほどきすぎず、鍋肌に静かに預ける

麺を入れたら、強くほぐしすぎないでね。大きな塊を分ける程度で止めるのがコツ。細かくちぎれた麺や、露出したでんぷん質が増えると、麺同士がまとまりやすくなることがある。形を保ったまま焼けば、鍋肌に触れる面を作りやすいよ。
ここでは追加の水を入れない。水を足すと、麺表面のでんぷんが水を吸って膨らみ、粘着性が増しやすくなる。まず麺表面の水分を飛ばしたいから、麺を置いたあとは、むやみに動かさず鍋肌との接触を保つ。表面の水が蒸発して温度が上がると、高温部ではアミノ化合物と還元糖が関わるメイラード反応が進み、褐色の成分と香りが生まれるよ。
フライパン先輩も、ここでは静かに待つ係。ずっと動かしていると、麺が鍋肌に触れる時間が短くなるの。焼き色は、音や香り、麺の表面の様子を見て判断しよう。焦げ色を急いで追うより、水分が抜けて麺の表面が焼ける時間を確保する。メイラーとリジーが香りの仕事をしやすいように、ぼくも火加減を見張ってる。
ソースは短くまとわせて、キャベツは最後に戻す

麺に焼き色と香りが出たら、液体ソースを加えるよ。ソースは麺の表面に広げたら、接触時間をおよそ30秒にとどめて仕上げる。長く置くほど麺のでんぷんが水分を吸いやすくなり、粘りにつながるから。液体ソースに含まれる糖類も、長時間高温にさらすと焦げやすく、せっかくの香りも損なわれやすいの。
ソースを手早く被覆させたら、取り出しておいたキャベツを最後に戻す。キャベツを先に戻して長く一緒に炒めると、その水分が麺へ移る時間も長くなる。最後に合わせれば、キャベツの水分を受け取る時間を短くできるよ。ソースの味を麺へまとわせながら、焼いた表面の状態も守る。その両立を目指して、ここは手早く。
火を止めたあとも、フライパンから食品への熱移動は続くよ。だから「火を止めたから安心」と鍋の中に置いたままにせず、すぐ盛りつける。盛りつけが遅いと、ソースやキャベツの水分が麺へ移り、余熱で加熱も進む。鍋底で焦げることもあるから、最後の数十秒までが仕上げの一部。リコりんからの合図は、ソースがなじんだらお皿へ、だよ。
熱いうちに食べる。残った分はすみやかに冷やす

この焼きそばは、生肉や生卵を含まないけれど、冷蔵麺を使うときは製品表示に従って加熱して、全体を熱い状態にしてね。麺を焼く香ばしさと、食べるときの温かさは別の話。仕上がりをおいしく保つためにも、熱いうちに食卓へ運ぼう。
食べきれず残った分を室温に置きっぱなしにするのは避けて、すみやかに冷やして冷蔵へ。調理直後の鍋の中も、盛りつけた後のお皿も、時間がたてば温度や水分の条件が変わっていくよ。ぼくは加熱で強くなる赤い子だけど、この皿では、加熱し続ければ何でもよくなるわけじゃないと見張ってる。
キャベツは短く焼いて一度休ませる。麺は水を足さずに鍋肌で焼く。ソースをまとわせたら、すぐ皿へ。工程を分けると、香ばしさを作る時間と水分を抑える時間が見えやすくなるの。赤くない焼きそばにも、ぼくの熱の見守りはちゃんと効いたかな。さあ、香ばしいところから召し上がれ。